鎌倉と猫の日記

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2011年4月1日金曜日

放射能のこと

震災からしばらくの間、会社で放射能に関する情報を集める担当をしていたのですが、仕事のことなので詳しいことは書けないですが、それを通して思ったことなどを少し書いておこうかと思います。

まず、情報を集める過程で同僚と議論しながら考えていたことは、いろいろな資料を読んで理解しようとしたわけですが、どんなに頑張っても素人の付け焼刃なので、その理解が正しいのかどうかは誰にもわからないという限界でした。ですので、情報の内容以外の部分で、その情報の信頼性を検証しようとしました。つまり、ある情報が信頼できるかは、その情報を発信している個人や団体が客観的に信頼に足るかどうかで検証しようとしました。

例えば、放射線医学総合研究所(http://www.nirs.go.jp/index.shtml)というところが放射線被曝に関する情報を3月14日から提供していました。当時、まだ福島の原発の放射線に関するまとまった情報がインターネットにほとんどなかった中で、ここの情報は分かりやすくまとまっていたので急いで共有しようと思ったのですが、果たしてこの内容が本当に正しいのかどうか、どうやって調べればいいのかわかりませんでした。そこで、そもそも放射線医学総合研究所というのが一体どういうところなのかを調べたところ、文部科学省所管の放射線に関する医学研究を行っているところで、福島の原発で被爆した自衛隊員を14日に実際に受け入れていることがわかり、実際に被爆の治療を行なっている医療機関が発信している情報なら、信頼してもいいだろうと判断しました。

そのような基準で選んだ放射線医学総合研究所、WHO、IAEAの情報を基準にしながら、東京電力、原子力安全保安院やその他の機関やメディアの情報を整理していました。結論として、原子力安全保安院の発表は基本的に妥当なもので、避難勧告が出ている地域の外では、健康被害について心配する必要はないと判断しました。これは、基準とした3つの機関と原子力安全保安院の発表が整合性が取れていたためです。

この問題について、日本のメディアの反応は、最初の混乱を除くと、初めの10日間くらいは非常に冷静だったように思います。しかし、この間、海外のメディアは言語の壁の問題もあったのか、過激に危機感を煽り立てるような報道が加熱していたようです。日本からの放射性ヨウ素が健康被害を起こすはずのないアメリカで安定ヨウ素剤が売れているというニュースは笑い話にしか聞こえないのですが、それほど危機感を煽る報道をしていたという一例でもあります。

その混乱した海外のニュースは、しばらくすると日本に逆輸入されてきました。最初は、日頃から日本語の報道よりも英語の報道を信頼しているような「識者」を中心にしていたように思いますが、次第に日常に戻りつつあった日本のメディアも煽りを始めるようになって、やがて陰謀論を唱える人が現れてきたような気がします。いや、実はこの辺は同時多発的だったのかもしれませんが、混乱しながら加熱する海外の報道は一役買っていたのではないかと思います。

時間が経つにつれて情報が増え、玉石混交というか玉の数はほとんど増えないで石の数ばかり増えていったように思いました。皆が「私の放射線理論」を語り始めました。おそらくそこに出てくる単語は、少し前まではこの世に存在することすら知らなかったはずの単語ばかりなのに。その中には、複数の専門家が口をそろえて正しいと言っている内容を否定するようなものも出現しました。専門家も人間なので、個人個人は間違えることもあるわけですが、複数の専門家が別々に同じことを言っている場合、それはほぼ間違いなくその分野でのコンセンサスなので、それを否定するのは余程のことが必要だと思うのですが、意外にみんな軽々と越えていくのは不思議です。

この文章を書いている間にも、またひとつデマらしいものが入ってきました。IAEAが飯舘村から避難勧告を出したという話が報道されていたのですが、ニュースで会見のビデオを見ても、IAEAのUpdateを見ても避難勧告は出していなくて、"carefully assess the situation"を日本政府に求めているだけでした。でも、例によって海外メディアは騒ぎてているようです。例えば、NY Timesは(ここは、最初の頃に放射能がアメリカにまで到達するばかばかしいシミュレーションを報道していたところですが、)すぐに避難勧告範囲を広げるべきという誰かの説を、IAEAの発表に絡めて紹介しています。

IAEAの発表: http://www.iaea.org/newscenter/news/2011/fukushima300311.html
NY timesの記事: http://www.nytimes.com/2011/03/31/world/asia/31japan.html?_r=2&ref=global-home

当初の冷静さとは打って変わって、今やニュースを見てもネットを見ても、誰が信頼に足る情報を伝えているのかわからなくなってきているのは不安なことです。相変わらず、原子力安全保安院、WHO、IAEAなどの公的機関の発表は信頼できると推定される状況は変わっていないと思いますが、それを解説して周知させる役割を担うはずのメディアが、意図してかしないでか、混乱に陥ってしまっているのは残念な状況です。伝聞情報はまずは疑って、ニュースの元になった公的機関の発表を確認する態度が必要なのではないかと思います。

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